ものづくり補助金は、なくなったのか|2026年度の統合で何が変わったか

「ものづくり補助金は、なくなったのですか」

そう聞かれることが増えました。結論から言えば、なくなってはいません。ただし、名前も枠組みも変わりました。

2026年度から、ものづくり補助金と新事業進出補助金が一本化され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という新しい制度になりました。事務局も、独立行政法人 中小企業基盤整備機構に一括化されています。

この記事では、何が引き継がれ、何が変わったのかを、公募要領に沿って整理します。

従来の制度は、どの枠に引き継がれたのか

新しい制度は3つの枠に分かれています。

革新的新製品・サービス枠 旧・ものづくり補助金 750万〜2,500万円
賃上げ特例で最大3,500万円
新事業進出枠 旧・新事業進出補助金
(さかのぼれば事業再構築補助金)
2,500万〜7,000万円
賃上げ特例で最大9,000万円
グローバル枠 旧・ものづくり補助金のグローバル枠 2,500万〜7,000万円
賃上げ特例で最大9,000万円

これまで「ものづくり補助金」と呼んできた制度は、「革新的新製品・サービス枠」に引き継がれています。金額の水準も、従業員数による区分も、旧制度とほぼ同じです。

手続の面では、スケジュールと申請窓口が1つに集約されたのが大きな変化です。これまで別々に公募されていたものが、同じ時期・同じ窓口になりました。

要件は、確実に厳しくなりました

ここが本題です。名前が変わっただけではありません。旧ものづくり補助金(23次締切)の公募要領と読み比べると、次の点が変わっています。

旧・ものづくり補助金 新制度
付加価値額 年平均成長率 3.0%以上 4.0%以上
賃上げ 一人当たり給与支給総額 年平均成長率 3.5%以上(未達なら返還)
事業場内最低賃金 地域別最低賃金より30円以上高い水準(未達なら返還)
一般事業主行動計画 従業員21名以上のみ 全事業者に必須
子育て等の職場環境整備 なし 新設

付加価値額が3.0%から4.0%へ

3〜5年の事業計画期間で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年平均4.0%伸ばす計画が必要になりました。1ポイントの引き上げですが、複利で効きますので、5年計画なら差は小さくありません。

一般事業主行動計画が、全事業者に必須

実務上、いちばん影響が大きいのはここだと思います。

旧制度では従業員21名以上の事業者だけの要件でしたが、新制度では規模を問わず全事業者に求められます。次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」というサイトで公表する必要があります。

そして、公表には1〜2週間かかります。しかも応募申請時までに公表が完了していなければなりません。締切間際に気づいても間に合いません。

子育て等の職場環境整備が新設

指定された取組の中から1つを選んで実施し、事業計画に記載することが求められます。実績報告時には、実施したことを示す証憑の提出も必要です。

変わっていないこと

誤解の多い点なので、こちらも書いておきます。

革新的新製品・サービス枠は、革新的な新製品・新サービス開発の取組が補助対象であり、既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外です。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)

「古い機械を新しくして生産性を上げたい」では、旧制度でも新制度でも通りません。この記述は、旧ものづくり補助金の公募要領とほぼ同じ文言で残っています。

単に機械装置・システムを導入するだけで、新製品・新サービスの開発を伴わないものは対象外。同業他社にすでに相当程度普及している製品・サービスの開発も該当しません。

見落としやすい落とし穴

1回の公募につき1申請しかできません。そして「みなし同一事業者」の判定が、かなり広く設定されています。

  • 親会社が議決権の50%超を持つ子会社・孫会社
  • 代表者および住所が同じ法人、主要株主および住所が同じ法人
  • 実質的支配者が同じ法人
  • 配偶者・親子およびその他生計を同一にしている者が関わる法人

これらはすべて同一事業者とみなされ、そのうち1社しか申請できません。複数が申請した場合、申請した全社が要件を満たさないものとして扱われます。

ご家族でそれぞれ会社を経営されている場合など、本人に自覚がないまま該当していることがあります。申請前に必ず確認が必要な点です。

第1回公募のスケジュールは次のとおりです。

公募開始
公募要領の公開
令和8年6月29日(月)
申請受付の開始 令和8年9月30日(水)
申請締切 令和8年10月30日(金)18:00
採択発表 令和9年1月頃(予定)

申請の受付が始まるのは9月30日で、公募開始からは3か月あります。この期間は、事業計画を練り、必要な準備を整えるために置かれていると考えたほうがよいでしょう。

とくに、先に述べた一般事業主行動計画の公表には1〜2週間かかります。申請受付が始まってから動くのではなく、それまでに済ませておくものと考えてください。